武石の郷から平和を考える

安保関連法案について

松原 邦彦(2015.7.13)

 7月12日(日)朝のNHK討論会で6人の憲法学者が討論をしていた。うち3人は安保関連法案賛成論で3人は反対論であった。
 その中の賛成論者の一人が「自衛隊が憲法違反か」どうかを問い、合憲と答えさせてから、今回の法案を「合憲」と言わせようとする学者がいた。この論法は阿部総理の論法と本質的に同じである。
 私は次のように考える。
今回の法案が通れば、自衛隊に新たな機能が加わって、先制攻撃可能な機能を持ち、自衛隊の存在そのものが違憲となるであろう。其処には、なし崩しに憲法解釈を変えてゆこうとする論理が見て取れる。
 阿部首相が今回の法案を通せば憲法改正の下地が法律上作られ、次には、憲法改正に持ってゆく、という道筋を前提に法案を提示していると思われる。

 内閣官房は文書
「平和安全法制等の整備について」の中で「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の一問一答
を公表している。それによると、

【問29】 今回の閣議決定により、米国の戦争に巻き込まれるようになるのではないか?

【答】 憲法上許されるのは、あくまで我が国の存立を全うし、国民の命を守るための自衛の措置だけです。もとよ り、外交努力による解決を最後まで重ねていく方針は今後も揺らぎません。万が一の事態での自衛の措置を十分にし ておくことで、却って紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。

【問31】 今回の閣議決定により、必要ない軋轢を生み、戦争になるのではないか?

【答】 総理や大臣が、世界を広く訪問して我が国の考え方を説明し、多くの国々から理解と支持を得ています。万 が一の事態での自衛の措置を十分にしておくことで、かえって紛争も予防され、日本が戦争に巻き込まれるリスクは なくなっていきます。

*------------*(my opinion)
 日本は戦争をしない国だというイメージは一気にくずれる。このため日本はテロの攻撃対象に入りやすくなり、紛争当事国になりやすくなるであろう。
 人類が地上で克服すべき課題は何かについて阿部政権は認識が欠如している。総理が世界を訪問して説明するたびに、戦争をなくすという人類の進むべき道から日本が一歩後退し、国家間の戦争を起こしうる国としてのリスクを増大させているのに気が付かない。


【問32】 今回の閣議決定によっても、結局戦争を起こそうとする国を止められないのではないか?

【答】 日本自身が万全の備えをし、日米間の安全保障・防衛協力を強化することで、日本に対して戦争を仕掛けよ うとする企みをくじく力、すなわち抑止力が強化されます。閣議決定を受けた法案を、国会で審議、成立を頂くこと で、日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていきます。

【問33】 武器輸出の緩和に続いて今回の閣議決定を行い、軍国主義へ突き進んでいるのではないか?

【答】 今回の閣議決定は戦争への道を開くものではありません。むしろ、日本の防衛のための備えを万全にするこ とで、日本に戦争を仕掛けようとする企みをくじく。つまり抑止力を高め、日本が戦争に巻き込まれるリスクがなく なっていくと考えます。

*------------*(my opinion)
 米国が戦争を始め、弾薬提供が出来るようになれば、後方支援部隊として、敵方から先制攻撃の対象になり、戦闘に巻き込まれるのは明らかである。
 向こうから仕掛けてくる可能性があるなら先に徹底的にたたいておこうということになる。ゲームのルールのようなことを言っているが、そのようなことは実際の戦いになれば全て無効であり、相手方の戦闘力を挫くために敵方はなんでもするのである。敵方に攻撃の根拠を与えないことこそ防衛力なのだと考える。

*------------*(my opinion)
 日本が武力攻撃を受けていない場合でも攻撃できるとする法案は戦争を仕掛けやすくなっている。そのような法律体系をもくろんでいることは否定しようがない。阿部首相はこれを言い換えてそのようなことはなく、「必要最小限度」という言葉を使う。限度とはその時の状況によりいくらでも変えられるものである。「日本を守りやすくなっている」と繰り返す。さらに、「平和な日本を次世代に引き渡すために」と言う。私はこれを阿部首相の「呪文」と呼ぼう。古代国家において呪術をもって政治をした時代があった。これを国民が見抜けないというのだろうか。

松原 邦彦(2015.7.13)